アカデミックベンチャーのトップランナーを目指す「㈱塚原牧場」


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株式会社 塚原牧場 代表取締役 塚原昇さん
1966年生まれ、茨城県境町出身。千葉大法経学部卒業、筑波大学環境科学研究科修了。
博士課程のビジネス科学研究科に進学。7年後に単位取得退学。
千葉大卒業後、ベンチャーキャピタル「JAFCO」に入社。有名衣料品チェーン店の上場に携わった後、父の経営する養豚業で伸び悩んでいたブランド豚「梅山豚(メイシャントン)」部門の子会社を買い取り独立。ブランド豚での成功を目指し、筑波大学環境科学研究科に社会人入学し、リサイクル飼料を学ぶ。リサイクル飼料の開発・販売を手がける「ACT21」の代表取締役を務める一方、ブランド豚「梅山豚」の飼育・販売に日本で唯一成功し、筑波大発ベンチャーとしてメディアにも頻繁に取り上げられている。

筑波大に社会人入学、エコフィードを学ぶ

なぜ、低迷していた梅山豚(メイシャントン)を引き継ごうと思ったのですか?

―もともと、VCで働いていたこともあり、伸び悩んでいる新規事業を成功させてみたいという思いに駆られたからでしょうか。養豚業は臭いや騒音など、イメージも良くない上にあまり儲かりません。新しい畜産業成功のヒントを得るために、筑波大に社会人入学しました。

大学ではどんなことを学ばれたのですか?

―環境科学研究科ではリサイクル飼料(エコフィード)について勉強し、博士課程のビジネス科学研究科では商標登録やブランディング、マーケット戦略などを学びました。卒業後、麦茶の工場で産業廃棄物として焼却処分していた麦茶の搾りかすをえさにするなど、平成5年「ACT21」としてリサイクル飼料のベンチャーを立ち上げると同時に、父の梅山豚(メイシャントン)事業を引き継ぎました。その後は飼育に試行錯誤するなど、売れない期間も長く、飼料事業で補填しながら何とか食いつないでいました。やっと軌道に乗り、「塚原牧場」として独立したのが平成14年のことです。

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梅山豚(メイシャントン)の飼育にもリサイクル飼料を使用しているわけですね。

―すべてリサイクル飼料です。国産の緑茶や麦茶の搾りかす、豆乳の搾りかすなどを工場から買い取り、それらの配合率を変えて「飼育前期用」や「飼育後期用」のえさを調合します。工場では、産業廃棄物として処分する必要がなくなったうえ、わずかですが収入源になるので、コストパフォーマンスも企業イメージも改善されたと好評です。

飼料の配合にこだわり、旨みの強い肉に仕上げる

成長段階に合わせてえさを変えるということですか?

―そうです。前期にはたんぱく質の多いえさを、後期には脂の味を乗せるようなえさを与えています。梅山豚(メイシャントン)はもともとうまみが濃い豚ですが、食肉は飼料によってさらに味が左右されるので、原材料はすべて国産で栄養も豊富な物を選んだ上、えさの配合にもこだわっています。

梅山豚ロース

経営が軌道に乗り始めたきっかけは何ですか?

―料理人の間で口コミが広がり、いつのまにか有名ホテルや三ツ星レストランからオーダーが入るようになりました。今は予約にて大半の豚が売れている状態です。わが社では飼育と販売に分かれ、食肉解体された豚を自社で検品し、直接販売するスタイルをとっています。家庭用として手に入るのは都内の有名デパートのみで、ほとんどがホテルやレストランからの予約販売というプロユースの傾向にあります。飼育期間も三元豚の2倍かけて飼育するので、必然的に市場に出す頭数が少なくなりますが、経営状態はベストと言えます。境町は東京に近く、輸送コストや鮮度の面で恵まれていたのも成功の一因かもしれません。

日本で唯一、飼育に成功

日本で成功しているのは、塚原牧場だけと聞いていますが、飼育が難しいということですか?

―梅山豚(メイシャントン)は、日中友好の証としてパンダの次に送られてきた中国原産の豚です。世界で一番子豚を産む豚で、中国では富の象徴とされていますが、未熟児で生まれる確立が高く、飼育も難しいとされています。通常の2倍は産むので、母乳にありつけない子豚は放っておくと死んでしまいます。飼育者が時間差で子豚を交代させたり、哺乳瓶で飲ませたり、人工保育を加えて育てている現在でも、飼育成功率は80パーセントです。3種類の雑種を掛け合わせる三元豚などとは異なり、梅山豚(メイシャントン)は純血種豚なので、当社では2~3年に1度はDNA鑑定を行い、近親交配にも非常に気を配っています。

スタッフは何人ですか?

―販売が7人、生産が8人です。飼育担当には、農大や農業高校を出た若者が多く、育てるのが難しい梅山豚(メイシャントン)に魅力を感じてやってくる人がほとんどです。先ほども話したように、飼育に手間がかかりすぎるので、好きではないと続けられない部分もあります。スタッフミーティングはとても専門的で、自ら母豚の成績を付けるためのソフトを構築したこともあります。

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アカデミックベンチャーを目指す

リサイクル飼料と養豚業で成功されている今、新たな目標はありますか?

―国産自給飼料に取り組んでいきたいです。リサイクル飼料はエコロジカルな取り組みですが、工場に依存しているのでいつ供給がなくなるか分かりません。昨年は常総市を襲った水害で不作に終わりましたが、国産とうもろこしの飼料を大規模に生産しようという試みも行っています。今年もGW後に播種は完了しました。
また、産業界と農業界の連携による先端ビジネスを展開し、畜産分野で最先端を目指したいと考えています。最近では㈱東芝と連携し、電解水を使用した感染症駆逐システムの研究に取り組んでいます。また、ICタグなどを使った罹病・治療歴の記録なども実験しており、今後もここを実験場にしてもらうことは大いに歓迎しています。これからの日本に合った自給飼料と畜産のあり方を提唱できるようなトップランナーになりたいですね。

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