害虫にのみ作用して環境にはやさしい農薬の実現


筑波大学 生命環境系
丹羽 隆介 准教授
発生遺伝学、動物生理・行動、応用生物学
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http://niwa-lab.org

発生・生理学的視点から、昆虫の脱皮と変態に必須のホルモン「エクジステロイド」が、どのような酵素(生体で起こる化学反応に対して触媒として機能する分子)によって作り出されているのか、またこうした酵素の働きが生体内でどのように調節されているのかを研究しています。
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今技術の特徴

これまでに、エクジステロイドの生合成に関わる酵素群や、その活性を制御する転写調節因子や神経シグナル経路を解明しました。昆虫は脱皮と変態が適切でないと生きることが出来ません。また、現在までに発見されたメカニズムの一部は、昆虫のみに存在が認められます。よって、これらの知見を活用してエクジステロイド生合成を撹乱することができれば、害虫のみに作用して環境に優しい農薬として利用できます。

今後の展望

我々が見出したエクジステロイド制御因子の機能を撹乱する物質を発掘することにより、農業に利用可能な新しい昆虫発育制御材の開発を目指しています。特に、エクジステロイド生合成制御因子「Noppera-bo」については、その酵素活性を指標としたケミカルスクリーニング系の構築に成功しています。この系は1万種程度の化合物の効果を1日以内に評価することを可能とするため、エクジステロイド生合成酵素をターゲットとした昆虫発育制御材シーズの迅速な探索が可能となっています。
農薬に関する研究・化合物ライブラリーを用いたケミカルバイオロジー研究において、共同研究を希望しています。
本技術を用いて、害虫以外への毒性が低く環境に調和した全く新しいコンセプトの農薬が実現します。

特許・主な論文

1) 丹羽隆介. 化学と生物 54: 508-513 (2016).
2) Ameku and Niwa. PLOS Genetics 12: e1006123 (2016)
3) 特願2014-246154「フルオレセイン誘導体またはその塩、グルタチオン—S—トランスフェラーゼ測定用蛍光プローブ、およびこれを用いたグルタチオン—S—トランスフェラーゼ活性の測定」(東京薬科大学、筑波大学、2014年12月4日)
4) Komura-Kawa et al. PLOS Genetics 11: e1005712 (2015)
5) Ohhara et al. PNAS 112: 1452-1457 (2015)
6) Shimada-Niwa and Niwa. Nature Communications 5: 5778 (2014)
7) Enya et al. Scientific Reports 4: 6586 (2014)
8) Lang et al. Science 337: 1658-1661 (2012)

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