組織・器官形成の記憶メカニズムを読み解く~不思議な波動現象を世界で初めて発見~


筑波大学 生命環境系
桑山 秀一 准教授
生物学専攻
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http://www.biol.tsukuba.ac.jp/~hidekuwayama/

ソリトン波とは、衝突しても互いに波形が変わらずに通りぬける不思議な性質をもつ孤立した波のことで、さまざまな非線型現象として現れることがわかっています。今回ある波状の細胞運動集団(塊)は、ぶつかり合っても互いの形を崩すことなくすり抜けてしまうことを発見しました。このことは、同質の細胞の塊であっても互いに独立(孤立)して存在すること、衝突の前のそれぞれの形は記憶され衝突後元の形を復元することによりすり抜けが起こっていることが分かりました。このぶつかってもすり抜けるという多細胞運動の不思議な特徴をもたらしている未知のメカニズムが解明されれば、生物の器官形成や個体形成といった形作りのメカニズムに新しい視点が得られることが期待されます。

 

ソリトン現象の特徴と有用性

同研究グループは、多細胞の集団運動においてソリトン現象が存在することを世界で初めて発見しました。
ソリトン波とは、衝突しても互いに波形が変わらずにすりぬける不思議な性質をもつ孤立した波のことで、さまざまな非線型現象として現れることがわかっております。たとえば水深の浅い水面で生じる波のなかには、孤立した状態で塊となって速度と波の形状を変えることなく遠くまで伝わるものが見られます。また、そのような孤立波は、別の孤立波を追い抜いてもそれぞれの振幅、速度が変化しません。このような粒子的な性質を持つ波はソリトン波と呼ばれ、数学、物理学の広い分野で注目されています。

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今後の展望と企業への提案

これまでこのようなソリトン様の性質を示す集団運動は報告されたことがなく、ソリトンの性質を持つ細胞運動としては世界初です。
動物の発生期においては、細胞は塊(集団)としての細胞運動が組織・器官形成に大きな役割を果たしますが、その集団としての細胞運動メカニズムについては十分理解されていません。そのメカニズム解明そして器官形成に関連する再生医療に必要な知的基盤として、今回発見したソリトン現象が大いに役立つと思っております。
ソリトン現象の理論的な解析と生物の形作りについての共同研究を希望します。
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特許・主な論文

Kuwayama H, Ishida S. Biological soliton in multicellular movement. Sci Rep. 2013;3:2272. doi: 10.1038/srep02272. PubMed PMID: 23893301; PubMed Central PMCID: PMC3725511.

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